断片置き場

小説とか書評とかを書いていくつもりです

だから見るなといったのに

だから見るなといったのに: 九つの奇妙な物語 (新潮文庫nex)

だから見るなといったのに: 九つの奇妙な物語 (新潮文庫nex)

 

 日常生活、あるいはその延長上だと思われていたイベントで、潜んでいた恐怖を題材にしたなかなか豪華なメンバーのアンソロジー

理不尽な怪異もあれば「人間が怖い」系もあり、豊かなバリエーションで楽しませてくれる。

ただ、タイトルどおりに後悔させるほどのの凄みのあるものはなかったかな。

特によかったものを挙げておく。

芹沢央「妄言」

・引っ越してきた夫婦。隣室の中年女性は妻にとてもよくしてくれる。夫は助かるとはじめは喜んでいたが、ありもしない話を妻に吹き込むようになり夫婦仲に亀裂が…

厄介な隣人を扱った作品で一番現実で起こりそうな話、いやだなあと思わせておいて、最後の最後でちょっと違う要素を組みこんでくる。このジャンルの組み換えがうまく作用して、読者の人物にたいする印象を大きく揺さぶって不安を掻き立ててくる。巧みだ。

 

ホラー熱が上がってきているのでもう少し掘り進めたいところ。