ホラー作品を愛する著者、しかし実際に心霊現象に遭遇したことはない。そんな作者が怪談話を蒐集しつつ、どうにかして実際に遭遇できないかと苦闘する、少し怖いところもあるけれどユーモラスなエッセイ。
幽霊は人間の脳の中の電気信号だろうと述べているように著者は超自然的な事象に懐疑的な態度である。それが前提だとしても怪談を楽しむという著者のスタンスが、私の怪談の鑑賞態度と近く心地よかった。
面白かったのは藤野先生がエア猫を飼っている、という話。アレルギー持ちの作者の、それでも猫を飼いたいという欲求を不思議な方法で実現している。イマジナリーフレンドならぬイマジナリーペット、かわいらしいと思ったのだけど、表紙や文中のどこか不穏な文章と合わせると想像が広がる。
私もまた幽霊を見ない、見たことがない。見たいという気持ちもやっぱりある。でも終わりに書かれる、藤野先生の考える幽霊の在り方はとても素敵なものだった。私も幽霊を見なくてもいいのかも、と思った。