断片置き場

小説とか書評とかを書いていくつもりです

山尾悠子

『小鳥たち』『山の人魚と虚ろの王』と山尾悠子を立て続けに読んだ。

高度な幻想文学について語る難しさをいままさに感じている。何度か山尾悠子について友人に語ろうとしたことがあったが一度としてうまくいったことがない。それは安易なメッセージ性やメタファーには思わせないという配慮が行き届いているがゆえのことである。夢のことを人に話して多少の顰蹙を買うことも通じているのかもしれない。個人的なしかも他者に語る気になるような夢は少なくとも何かのメッセージにに還元しがたい内容の筈だからだ。そう考えれば優れた幻想文学とは他者から聞かされる夢の話の退屈さを感じさせず、それでいて自分の夢のようだと思わせる(あるいは自分の夢だったらと願わせる)作品なのかもしれないという思いつきに至った。耽溺するに最高の小説。

とここまで書いて、いや私は人の夢の話を聞くのは嫌いではないんだけど、とか幻想文学にも明示的な比喩でありながら面白いものもあるとかそういう突っ込みが浮かんできたけどだいぶ夢見心地にあるので、まあいいかと投げる。

私の夢は常々退屈なものだらけで(過去とのことが若干の変奏を見せるか、遅刻などの現実的な不安がそのまま現れる)ただただげんなりさせられるが物語は現実からの逃避であると同時に私の夢たちからも逃避できている気がする。