断片置き場

小説とか書評とかを書いていくつもりです

奇書と怪文書

ここしばらくユリイカの奇書特集をちょびちょび読んでいた。

 奇書とはなにか。もちろん奇妙なことが記されている書物だろう。しかしそれが意図的なものもあれば無自覚なこともある。古い書物が時代を下るにつれて誤りだらけになり奇書の扱いを受けることもある。やっと半分ほどといったところだが、奇妙な書籍のカタログ的なコーナーはなくて、各読書通が思う奇書の定義や自分と特定の奇書とのいきさつが語られるような感じ。面白いけど一気読みするようなものではない気がする。円城先生と酉島先生の対談が楽しかった。

 奇妙な本と思うものを読みたいという欲は私にもあるが、奇抜なコンセプトで意図的に作られたタイプのものしか読んだことがない。著者がいたって真面目に、真剣に書いたうえで、それが型破りにすぎたりあっる種の冷静さを欠いたりしたタイプのものは読んだことはないかもしれない。だいぶエネルギーが必要になりそうだが。


 マンガ『コワい話は≠くだけで』が面白かったので原作者つながりでこちらも読んでみる。もちろんこれは作られた奇妙な書物。
 そのほとんどすべてのページが作者が集めてきたという不明な文書の画像で、一見意味不明なものだらけであるが、通してみると1つのメッセージのようなものを見出すことができる。
 いや…これこそこの本の狙いそのものであり、再三にわたって警告される危険性そのものなのだ。それぞれの怪文書に実は何らの関連もないのに、それを巧妙に配置することで「わかった」ように感じてしまう、ありもしない文脈を植え付けられる体験ができる書。

 なるほどよくできている一方で、ある種の精神疾患における分かった!という感覚に近いものを扱っており、それを可能な限り打ち消すための白けさせるような工夫が盛り込まれているのだということが伝わってきた。

 ソフトにパッケージングされた狂気を楽しみたい人向けという感想です。