断片置き場

小説とか書評とかを書いていくつもりです

どこかにいるかもしれない

作家との別れはいろいろなものがあって、自分が成長するにつれて(変わらない)作風が肌に合わなくなる場合や、逆に作風が大きく変わってついていけない場合もあるし、(自分にはあまり覚えがないが)作家の作品外での言動が気にくわないとかもあるかもしれない。だがもっと単純に、作品がぱたりとでなくなる、ということもある。

大体事情は知れる、端的にいって売れなかったのだろうと感じられるものが多い。ニッチな作風を好む読み手はその性質上こういうことにぶち当たりやすい。狭い範囲に刺さる内容を継続して書き続けても生きてはいけないことのほうが圧倒的に多い。

しかし、売れていても続きが出てこないこともある。これは分からない。作者が書くことに疲れたのかもしれないし、病気なのかもしれないし、分からない。SNSが普及して少しはそういうことが減ったけど、完全になくなることもない。読者が作者の何もかもを知りうるべきだとは全く思わない。

そうして心の中に、消息のしれない作家のリストが、無自覚なまま生成されていく。何かきっかけがあるとぽっと浮かんでくる、名前。関わっていた作品の名前を見たときはわかりやすいが、題材にしていた実際の事件や人物を経由してくることもある。そして検索する。大概は何も見つからない。たまに何かが見つかることもある。深堀りすると別名義で活動していたりするかもしれない。醜聞でない限り嬉しい。

案外、調べる前から知っていたゲームや映像などの作品に関わっていたりすることもある。灯台はいつだって暗い。

何か決定的な結末を迎えたのでなければ、どこか、どこかにいるかもしれない、と思えているうちは幸せなのかもしれない。そうやってまた検索をして夜が更けていく。